分かり合えない
分かり合えない
そう思った。
父は引き際も見極められない野郎で、本当にしつこいったらありゃしない。
父にお出かけしようと言われた時、とても具合が悪かったから私はちゃんと
「行かない」
と言った。それなのに
「行きたいとこ調べて準備しといて」
と返された。この時点でありえないだろう。
私は無視した。しばらくして父が
「行きたいとこ調べた?」
と聞いてきた。私は
「行かないって言ったでしょ」
と返した。父はまた
「行こうよー」
と言ってきたが無視すると渋々引っ込んでった。少し時間が経ってから父はまた私のところに来た。
「手紙書いたから読んで欲しい」
このセリフを聞いたとき、不審者が登下校中の女子児童に卑猥な言葉が書かれた紙を見せて読ませようとしたという事件を思い出した。そして変な話かもしれないが
『父からの手紙を読むのが怖い』
なんて思ってしまったのだ。手紙を貰ったら嬉しいはずなのに。友達から貰った手紙なら、あんまり関わったことの無いような人から貰った手紙ですら、読むのが楽しみになるはずなのに。
その時ああ、私はもうこの人に対して信用が無いどころかマイナスなんだ、ってこの気持ちは覆せない程嫌いなんだ、ってことに気づいてしまった。だから私は
「読まない」
と返した。そしたら父は
「じゃあちょっとお話しよう」
なんてことを口にしてきた。あまりのことに頭が真っ白になった。
「嫌だ、話さない」
ただ拒否することしか出来なかった。
私は布団に潜る。
『怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い』
父は居座る。早くどっか行ってくれ、そう願ってもまだすぐ近くに居る。
父は言った。
「お父さんと仲良くしてなんか困ることある?」
困るも何もお前が嫌いだから仲良くできない、ただそれだけの話。本当に父は諦めが悪い。
『気持ち悪いなあ』
こんなやつ相手にしてらんない。話にならない。ただでさえ具合が悪いのに、精神まで蝕まれたらたまったもんじゃない。
私のメンタルが一度ボロボロになったのは、父の言葉が原因も同然だったから。
『無視無視無視無視無視無視無視無視、無視するべき。言い返しちゃダメだ』
そう自分に言い聞かせる。
「じゃあ高校行くのかどうかだけでも教えて」
「行くかもしれないとかでも良いからさ」
「あめみそ(実際は私の本名を呼んでいる)がね、この先食べていければそれで良いんだけどさ学校行くなら勉強しないとでしょ?」
父が続けざまに言う。
そんなこと聞いて何になるんだろ、てかそれ前にも言わなかったか?ってことばっかり言ってきやがる。私のためと言いながら私を不安にさせるようなことばっかり言いやがる。
常々思う、こいつの頭の中には通信制の学校が無いのか?と。外に出て欲しいとか言って
「全日制の学校に行くのが良いんじゃないかな」
とかほざきやがるし、まるでこのままだと私が生きていけないかのように言う。
私のことをさもわかっているかのように言うもんだから不快で不快で仕方なかった。
まあ、長いこと無視していたら父は引っ込んで行ったが。父は何度もわざとらしいと思うくらい大きな咳をしていて、私の近くには居なくなったのに不快さを残していった。
――後日談――(話のところは部分的にしか覚えてないのでちょっと噛み合わないかも)
夜ご飯。今日は兄が居るから父を呼ぶのは兄に任せて1人で先に食べる。
父と兄が食べ始める。話をしだす。
父「バイト辞めたの?」
兄「いや、辞めてないよ」
父「大学もう始まったんだろ?バイトは辞めたのかと思ったよ」
兄「まあ、辞めるほどではないかな」
父「今のうちにしっかり勉強しとけば良いのにね、あめみそは勉強嫌いだからね」
『まただ』
兄と話して居たのに、また父はその後必ずこうやって小馬鹿にした態度で話の中に私を引きずり出して笑う。
「仲良くしたいならまずはその態度を改めろよ」言えなかった言葉を悔やんで、眠りにつくまで繰り返し思うあめみそでした。
前に書いた話では次は母のことを書くと書いたけどそれよりも書きたい話が出来たので今回は父のことをまた書きました。次こそはたぶん母の話です。